最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)1976号 判決 1952年11月14日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人青山新太郎上告趣意第一点について。
所論前段の併合審理の問題は単なる刑法違背を主張するものであって、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。のみならず所論の第一事件が起訴された後本件のようにこれと併合審理しても被告人の権利保護を害する恐れのない所論第二事件が追起訴され公判廷において以上両事件につき事実上併合審理が行われ、被告人弁護人ともこの点につき何等の異議なく訴訟手続が進行された場合の如きは、刑訴三一三条一項の併合決定は当時既にあったものと解するを相当とするから、論旨は右何れにするも採るを得ない。
次に所論後段につき按ずるに本件のように被告人に対し最初起訴された第一事件(必要的弁護事件)につき国選弁護人が附され更に第二の事件が追起訴され、しかもその追起訴の第二事件も亦必要的弁護事件であって裁判所がこれを併合審理する旨決定した場合に裁判所が別段の意思表示をせず被告人と右弁護人も何等異議を述べなかった場合には、第一事件につきされた弁護人国選の効力は第二事件にも及ぶものと解するを相当とする。されば第一審における国選弁護人青山新太郎は被告人に対する追起訴に係る第二事件についても弁護権を有ししかも記録に徴すれば右弁護人は本件追起訴の第二事件についても終始その審理に立会い弁論しているのであるから所論違憲の主張はその前提を欠くものであるから論旨は採用するを得ない。尚所論判例違反の主張については、その判例の具体的掲出がなく適法な上告理由とならない。
同第二点について。
所論は物価統制令に関する解釈問題たるに過ぎず、刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。
同第三点について。
所論は原審で主張されずその判断を経ていない事項であって、上告理由としては不適法であるばかりでなく、第一審判決挙示の被告人の自白以外の各証拠により認め得られる多量の米を被告人が所持していた事実は所論の点の補強証拠となるものと解すべきである。論旨は採るを得ない。
同第四点について。
量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条に当らない。
尚本件は刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)